目次
メルカリの事業内容
①フリマアプリ「メルカリ」の運営
②スマホ決済サービス「メルペイ」
③BtoCマーケットプレイス「メルカリShops」
P/L分析
まずP/Lから見ていきます。
以下のグラフが2016年6月期~2020年6月期の売上と当期純利益(損失)の推移です。
売上は4年間で約6.2倍と大きく成長していますが、利益は赤字が膨らむ一方です。
もしかしたら、このまま赤字が続けばメルカリはヤバいんじゃと思うかもしれませんが、結論から言えば当面は問題ありません。
赤字が続いたり、債務超過になったりすれば「倒産」を連想するかもしれませんが、必ずしもそうではありません。
企業が倒産するのは、キャッシュがなくなったときです。
「黒字倒産」という言葉を耳にしたことがあると思いますが、いくら黒字でもキャッシュがなくなれば、企業は倒産してしまうのです。
では、メルカリのキャッシュの状況をキャッシュフロー計算書で分析します。
C/S分析
以下はメルカリの2019年6月期と2020年6月期の営業CFです。
営業CFは本業でのキャッシュのキャッシュの増減を表します。
まず見ていただきたいのが、一番下の「営業活動によるキャッシュ・フローの増減」の欄です。
2019年は約73億円のマイナスですが、2020年には125億円と大幅にプラス転換しています。
2020年の純利益は228億円のマイナスでしたが、営業CFはプラスであり、一見不思議に思えます。
次に見ていただきたいのが、「預り金の増減額」の欄です。
ここで、377億円キャッシュが増加しており、これが営業CFをプラスにしている要因と言えそうです。
預り金の増加が継続的なものであれば、今後もキャッシュを稼ぎ続けられて安心ですが、一時的なもので2019年のようにまたマイナスに転落してしまうと心配です。
次にメルカリのビジネスモデルを深堀して、預り金の正体を探っていきましょう。
ビジネスモデルの深堀
メルカリのビジネスモデルですが、ユーザーが商品を販売すると、販売した金額は現金としてユーザーに入ってくるのではなく、メルカリ内でポイントが貯まります。このポイントはユーザーがメルカリで商品を買うのに使用したりそのまま現金に換えることができます。
ポイントは、販売から現金化までにタイムラグを作っていることです。
メルカリ側としては、ユーザーが販売してからポイントを消費するまでの間は自社のキャッシュ(預り金)として取り扱うことが可能です。これが預り金の正体であり、営業キャッシュフローが増加している理由です。
ここで一つ疑問が出てきます。ユーザーが現金化を早くする(=タイムラグがなくなる)とビジネスモデルが成り立たなくなるではないかということです。
答えはYesですが、現金化を遅らせる施策をメルカリは取っています。
①現金化に手数料を設定
ユーザーとしてはある程度現金が貯まってから現金化した方が得であり、現金化までの期間が発生しやすくなります。
②スマホ決済サービスへ参入
メルカリは2019年にスマホ決済サービス「メルペイ」に参入しています。
従来であれば、メルカリのサービス以外を利用するには現金化が必要でしたが、メルペイによりポイントをメルカリ以外のサービスでも使用することができるようになりました。
ユーザーとしては、わざわざ手数料を支払って現金化する意味がなくなり、そのままポイントとして保有しておこうという動機に繋がります。
ここまでは現金化を遅らせる施策を見てきましたが、預り金の規模自体を増やす方法を考えていきます。
その方法はズバリ、メルカリの取引を拡大させることです。
メルカリはGMV(流通取引総額)という指標を用いています。
GMVは多少の波はありますが、概ね右肩上がりで成長しています。
GMVの成長のためにメルカリは広告宣伝費を多くかけて、ユーザーを増やしています。
2020年6月期も純損失は228億円ですが、広告宣伝費が343億円あります。
例えば人件費を減らそうとすれば、人員を減らすか給料を減らすかをする必要がありますが、どちらも労働法等との兼ね合いもあり、簡単なことではありません。
一方で、広告宣伝費は広告の出稿を辞めればすぐに減らすことが可能です。極論、2020年6月期の段階で黒字にしようと思えばできたことになります。
メルカリFACTBOOKより
メルカリの経営判断
これまで見てきたようにメルカリは赤字状態が続いていても、しっかりキャッシュが回るビジネスモデルになっています。
なので広告宣伝費のような先行投資をしっかりできる仕組みになっているのです。
メルカリとしても、広告宣伝費にしっかりお金をかけて、新規顧客の獲得、GMVの拡大を狙った方がトータルでリターンが大きいと判断したのでしょう。